年を重ねるごとの初心。老後の初心。(花鏡)

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先日、テレビ番組『がっちりマンデー』を観ていた。

番組では、様々な企業やそこの社長などが出演し、「儲けの秘訣」や「商品開発秘話」などを語ってくれる。

ビジネスや投資の勉強になる大変良質な番組である。

そこで、U-NEXT.HDの宇野康秀社長が出演していた。

宇野社長と言えば、USEN。

USENとは飲食店や美容室などで流れるBGMを有線放送で提供するサービスだ。

この先駆けの大成功者で、私が起業した2000年代前半の頃、宇野康秀社長といえばまさに若手起業家たちのカリスマ。しかもイケメン!

私たちベンチャー起業家(※当時)にとっては大の憧れの存在であった。

今でも検索すれば、宇野社長の若手実業家時代のイケメンぶりはいくらでも出てくるだろう。

もちろん、経営手腕も高く、その辺りも憧れの要因であった(その後、Gyao事業の失敗など、苦労はあったようだが)。

ちなみに、サイバーエージェントの藤田晋社長も、会社設立前から宇野社長にはお世話になっている。様々な若手実業家に影響を与えたカリスマ的存在であったことの証左であろう。

 

そんなイケメンで勢いのあった宇野社長がテレビに出演。

あれから20年以上も経過。宇野社長も単純計算で60歳は越えている。

どんな風貌になっているのか!?興味津々であった。

なんと、良い感じに温和な、それでもやはりイケてる風貌な社長になっていたのである。実に良い年の取り方だなと感じた。

しかも、番組内では宇野社長の昔と今の「マネジメント」や「指導」の違いが放送されていた。昔はイケイケで引っ張るタイプだったが、今は若手社員などを後ろから支えるようなタイプになっていたのである。

老子でいえば「上善如水」のような長老か。そのおかげもあってか、現在、ネット動画配信『U-NEXT』の業績も堅調。VOD(動画配信サービス)は、国内最高の約400万人の会員数を突破している。

 

話は長くなったが、ここで言いたいことは「老後の初心」である。

「その時分々々の一体々々を習いわたりて、また、老後の風体に似合ふことを習ふは、老後の初心なり。」

(世阿弥『花鏡』)

老後の初心とは?

世阿弥の『花鏡』に書かれた言葉である。

「初心忘れるべからず」は、多くの方が聞いたことがあるだろう。

「はじめた頃の気持ちを常に忘れてはならない」と。

しかし、世阿弥の真意はそこではない。

初心忘れるべからずというのは、常にやること、あたることが「初めて」の気持ちで臨みなさいということである。

例えば、私は趣味でピアノ演奏をやっているが、同じ曲を何度も弾いていると慣れてくる。慣れてくると、なんとなく惰性で弾いてしまったり、心をこめずに弾いてしまうことがある。

が、世阿弥に言わせれば、「毎回初めての気持ちで弾け」ということ。

毎度毎度、シチュエーションは変わる。温度や湿度も変わる。個人の状態も当然変わっている。ピアノの調子も変わる。

だからこそ、毎回が「初めて」の気持ちで臨むべきなのだと。

これが本当の意味で世阿弥が語っていた「初心」である。

 

そして、「老いの初心」とは?

それは、若い頃には若いなりの「初心」があり、老いた時には老いたなりの「初心」があるということ。

例えば、若い頃は「勢い」があったり「エネルギッシュ」だったりする。経営者ならグイグイ、カリスマ性で引っ張っていけたりする。

が、老いてしまうと勢いやエネルギッシュさは若手には負けてしまうだろう。

しかしながら、老いたら老いたで出てくる資質がある。「安心感」だったり「包容力」など。

つまり、老いたら老いたなりの「初心」となることが出てくるので、その初心を大切にしようということである。

間違っても「若者には負けん!」といって、勢いやエネルギッシュに仕事をしろということではない。これは世阿弥の言う「初心」ではない。勘違いする人は多いだろうが。

若い時には若いなりの特徴がある。役割がある。

老いた時には老いたなりの特徴がある。役割がある。

その都度「初心」があるのだ。

「がっちりマンデー」を観ていて、宇野康秀社長にはまさに「老いの初心」が感じられた。老いても都度「初心」を大切にし、進化していっている。周りを支え、幸せにしている。ああいう年の取り方をしたいものだと感じた。

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