「住する所なきを、まづ花と知るべし。」
(世阿弥『風姿花伝』より引用)
これは、世阿弥の言葉。
どういう意味か?
同じところに留まらないことが良いことだということ。
例えば、セミナー講師の講演が大成功し、講演後に拍手喝采を受けたとする。
すると、次もまた同じテーマや内容をやりたくなる。
しかし、世阿弥はそれは良くないと説く。次は上手くいかないだろうと。
そうではなく、過去の成功はないものとし、次の成功に向かって学び続け、挑戦し続けることが良いと。
これは経営でも投資でも同じことが言える。
例えば、経営者として、たまたま商品が大ヒットしたとする。作れば作るほど売れる状態。まさに左手にうちわ。
すると、やはり、人間とは弱い生き物で、この商品の成功にしがみつきたくなる。
他の商品開発をすることをサボったり、会食やゴルフ三昧の日々を送ったり。
しかしながら世の中は諸行無常。常に時代は移り変わる。人の好みや欲も変わっていく。
いずれその商品は売れなくなってくるのは必然。
ところが、売れなくなってから策を講じようとしても時すでに遅し。こまめに研究や情報収集もしていないため、以前のような開発力はない。
組織内の気持ちも緩んでいて緊張感もない。創業当時などのハングリー精神もない。
結果として、その企業は衰退していってしまうのである。
そうならないためにはどうすればいいか?
世阿弥の言うように「安住するな」の言葉を肝に銘じ、常に変化することを良しとするのである。
そういえば、今年2025年、日米通算4,367本のヒットを打った伝説の野球人イチローさんが米殿堂入りを果たした。これは日本人として初の快挙である。まさに偉人である。
イチローさんは日本で9年、アメリカで19年と、合計28年間プレーした。この間、ヒットを量産し続けた。
イチローさんといえば「振り子打法」が有名だろう。右足を大きく上げ、独特のタイミングの取り方で打つ。ちなみに私も草野球などでよくモノマネをしたものだが、結果は散々であった。それだけ難しい打ち方なのである。
そんな偉人であるイチローさんだが、面白いもので、その振り子打法も年々変わっていってるのである。同じような打ち方に見えて、微妙に変化し続けていたのである。同じ打ち方を決していていない。
例えば、日本にいる時は大きめに足を上げていて、軸の動きもあったが、メジャーに行く頃には足の上げ方は小さくなっていった。それにともない軸の動きも少なくなっていった。
まさに世阿弥の言う通り「住なき所を花」とした男である。
過去の成功を捨て続け、成長し続けていったのがイチローさんの偉大さのゆえんだ。経営者、投資家ならぜひとも肝に銘じたい学びである。